お節介な部長(妻ブログ9)

ある日、違う部署に中途採用の女性が入ってきた。



彼女は30代手前の眼鏡をかけた大人しそうなタイプだった。





特に気に留めていなかったが、数日して社内に不穏な空気が漂った。





『あの人はやばい』





一緒に仕事をしている人が言った。





なんでも、仕事中に説明を聞いている途中で足が痛いと言って座り込んだり、
仕事がつまらないと言ったり、電話の声が完全に幽霊だったり、
被害妄想も強く、少し注意されただけで泣き出してトイレに閉じこもってしまうらしい。





そんなわけないだろう、話を盛りすぎだ。





彼女と関わったことのない私はそう思っていた。






そんな時、事件は起こった。






社内のストーカーでお馴染みのストーカーが彼女にセクハラをしたというのだ。





彼女が言うことには、何度もしつこくLINEを聞かれて(これは前科ありでわかる)、
その後もLINEがしつこく(これも可能性はある)、
通りすがりにお尻を触られたらしい(本当か・・・?)





ストーカー男は社長室に呼びだされ、彼女の前で謝罪したらしい。





ストーカー男が言うことには、
狭い廊下ですれ違った時に当たってしまったらしい。






これは冤罪なのでは・・・?とも思ったが社内の人が出した答えは、





『あいつならやりかねない』






とのことだった。






社内のみんなは、入社して20年のストーカーより、
入社して数日の彼女の言うことを信じたのである。







しかしながら、彼女の評判もあがることはなく、更にひどくなっていった。






彼女はベビースモーカーで昼休みは社外にタバコを吸いにいっているらしく、
お弁当もダイエットをしているとのことで、小さなおにぎりひとつだけだった。






そこで、お節介な部長が何を勘違いしたのか、





『〇〇さんは会社に馴染めていないみたいですね。

妻さんの隣の席が空いているから、お弁当を一緒に食べてあげてください。』












おいおい、
バカかよ。




小学校低学年じゃないんだよ。






なぜ社会人になってまで、お弁当を一緒に食べることを強要されなきゃいけないんだ?






弁当くらい一人で食べられるだろうよ。






実際、みんなお弁当は自分の席で一人で食べるか、弁当がない人は食堂に行って食べていた。






私は自分の席でお弁当を食べており、ストレスを抱えた一日の中で最も安らげる時間だった。







しかも、彼女のお弁当は小さなおにぎりひとつ。






そして、食べたらすぐにタバコを吸いにいきたい心境。






お互いがお互いにとって不幸である。






お節介な部長の指示により、お互いが断ることもできず、
彼女の小さなおにぎりのペースに合わせての二人時間が始まった。









ちなみに、自称キムタクは私の目の前の席で、新入社員や若い女子に毎回しつこいくらい話しかけるのだが、
自分のタイプじゃない女子には一言も話しかけず、この時も一切の沈黙を貫いた。
ハゲも同様。本当に最低な奴らである。




お弁当強要制度がしばらく続いていた中、更なる事件が起こった。






その日、彼女は彼女の上司にささないなことで注意され、例の如く会議室に閉じこもってしまった。






いつものことだろう、と思ったがこの日の閉じこもり具合はひどく、総務が様子を見に行ったところ、






『もう辞めたいです』







とのことだった。








そして、彼女はそのまま帰ってその日以来姿をみせることはないのであった。







こうして、突如として、嵐のような数ヶ月は幕を閉じたのだった。





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